日本での最初の仕事の初日、私は職場に到着した。 すでに緊張でドキドキしている中、先輩たちから「自転車、乗れる？」と聞かれた。

私は、フィリピン出身の女性で、現在日本に来て4年目になる。 日本での新生活をスタートさせるために、学校を卒業してすぐにやってきた。最初の頃は言葉も文化も違って戸惑うことばかりだったが、少しずつ慣れてきた。そんな私の日本での生活には、いくつかの試練があった。その中でも、特に印象に残っているのは「自転車」の話だ。

日本での最初の仕事の初日、私は職場に到着した。 すでに緊張でドキドキしている中、先輩たちから「自転車、乗れる？」と聞かれた。その時、私は「もちろん！」と勢いで答えてしまったが、内心は焦っていた。「実は、ほとんど自転車に乗ったことがないんだけど…」 フィリピンではバイクやジープニー、トライシクルが主な移動手段で、自転車に乗る機会なんてほとんどなかったのだ。だが、職場のみんなが自転車で通勤しているのを見ると、「これは乗らないわけにはいかない」と感じ、なんとかなるだろうと自分に言い聞かせた。

その日の午後、先輩たち5人が集まり、近くの道で私に自転車の乗り方を教えてくれることになった。先輩たちはみんな慣れたもので、スイスイと自転車を操り、私に「ほら、こうやって乗るんだよ！」と教えてくれた。彼らが自転車に乗る姿は、まるで子どもの頃からずっと乗り続けているかのように軽快で、見ているだけでプレッシャーがかかる。

「自転車なんて、簡単に乗れるでしょ！」と自分に言い聞かせて、いざペダルに足を置いた。 だが、現実は甘くなかった。ペダルを踏み込むと、車体がぐらぐら揺れて、バランスが全然取れない。ハンドルをぎゅっと握っているのに、体は左右に傾き、倒れる寸前だ。私は何度も必死にバランスを取ろうとしたが、やっとのことで転ばずに耐えている状態だった。

先輩たちは、笑顔で「大丈夫だよ、ゆっくり慣れていけばいいから」と励ましてくれた。彼らの言葉に支えられて、もう少し頑張ってみようと思ったものの、内心では**「これは無理かも…」**という気持ちが強くなっていった。

その後、私は「一人で練習した方がいいかも」と決意した。 先輩たちに見られているとどうしても緊張してしまうし、転んだりしたら恥ずかしい。そこで、「ちょっと一人で練習してきます！」と言い残して、近くのブロッコリー畑の横にある静かな道へと移動することにした。人が少なくて、落ち着いて練習できそうな場所だ。

その道はほとんど車も通らず、風が気持ちよく吹いていた。私は再び自転車にまたがり、ペダルをゆっくり踏んでみた。すると、少しずつバランスが取れるようになってきた。**「あれ？思ったより乗れるかも？」**そう感じ始め、さらにペダルを踏み込んでスピードを上げてみた。

自転車に乗れるようになった気がして、調子に乗り始めたのはその時だった。

風を感じながら、自転車を漕いでいると、「私、ついに自転車に乗れるようになったんじゃない？」と自信が湧いてきた。そして、目の前に急な下り坂が現れたのだ。普通ならここで慎重になるべきところだが、私は「いける！この坂も余裕だ！」と勘違いし、勢いよく下り坂に突っ込んでしまった。

その瞬間、何かが狂い始めた。 スピードが予想以上に速くなり、ハンドルがぶるぶる震え始めたのだ。ブレーキをかけようとしたが、もう遅かった。カーブが迫ってくるが、制御不能。**「やばい！」**心の中で叫びながら、私はバランスを失い、自転車ごと横に倒れた。

次の瞬間、私は頭からブロッコリー畑に突っ込んでいた。

「バシャーン！」という音とともに、私は緑のブロッコリーと泥の中に埋まってしまった。自転車も私の体にのしかかり、完全に身動きが取れなくなった。土の匂いとブロッコリーの柔らかさが妙にリアルで、思わず「これは夢か？」と自問自答するほどの状況だった。

しかし、痛みよりも何よりも、「こんなところで何やってんだ私…」という猛烈な恥ずかしさが襲ってきた。誰にも見られていなかったのは幸運だったが、頭の中はもうパニック。どうにかして自転車を引き起こし、畑から這い出すしかなかった。

畑から抜け出した私は、全身泥だらけ。 足元にはブロッコリーがくっつき、髪には土が絡んでいた。私は自分に「もう絶対に自転車には乗らない！」と心に誓いつつ、自転車を押しながら職場へと戻ることにした。

職場に戻った私は、泥だらけの姿でみんなに「大丈夫？」と心配されたが、内心は**「何も大丈夫じゃないよ…」**と思いながら、なんとか笑顔でやり過ごした。

その日から、自転車に対する恐怖心が消えたわけではないが、少なくとも自転車に乗れるようにはなった。 そして今では、毎日自転車で通勤するのが日常になっている。ブロッコリー畑での転倒が、私にとって一つのターニングポイントとなったのだ。あの日の失敗があったからこそ、今こうして自転車に乗っている自分がいる。毎日自転車に乗るたびに、あのブロッコリー畑でのことを思い出しながら、密かに自分の成長を感じている。